『あれって……うちの学校の子だよね?』

『……』


カメラマンに何枚も写真を撮られ、一般人にはないオーラを出している。それは間違いなく悠里だった

読者モデルやってるって言ってたから多分それの撮影だろう。


『あの子、ファッション雑誌とかに載ってるんだよ。この前は有名なアーティストのPVに出てたって』

『へぇ、千花詳しいね』

『よく友達が噂してるし、学校でも知らない人は居ないんじゃないかな』


金には困っていない悠里がモデルをやっている理由は1つ。これも自分の価値を上げる為だ。

持ってる武器を上手く使い分ける能力はある意味尊敬する。



『洋平君はあの子の事、見た事ない?』


『うーん、何回かすれ違った事あったかな。
でもよく覚えてない』


多分、世の中のカップルで清く正しく付き合ってる奴なんて数えるほどしかいない。

心の中は言えない事だらけで、
やましい気持ちを上手く隠してる。

だけど俺は嘘は下手な方。

勘づかれないのは千花が疑うって事をしないから。


疑う事をしてしまう方が悪いけど、
きっと、千花の性格は損をする。

恋愛はそんなに綺麗なものじゃない。



俺達は再び歩きだし、駅に向かっていた。
この後どこかへ寄り道する予定はない。


『今度は洋平君が見たい映画見ようね。今日は私に付き合ってもらっちゃったから』

『………あーそうだね』


『そ、そう言えばもうすぐ夏休みも終わっちゃうね。学校が始まったら………』


千花が少し早口になった所で、俺は足を止めた。




『あのさ、暫く会うのやめない?』


『……………え?』


俺の突然の言葉に千花は固まった。


『あーほら、課題も全然やってないし千花も夏期講習忙しいでしょ?だから……うん』


曖昧な事しか言わない俺はなんてずるいんだろう。

千花の言葉も顔も見ないまま、俺は改札を抜けた。


『じゃぁね、ばいばい』


何度も言う。
----------------恋愛は綺麗じゃない。


今は分からなくてもいずれ分かる。

こんなのは青春の通過点で、
思い出の一部でしかないって事に。