君はガラスの靴を置いていく





日が落ちはじめてきた頃、俺は千花を送る為に隣町へと引き返した。夜はまだまだこれからだけど千花の家には門限があるらしい。


そんなの破っちゃえって言いたい所だけど、千花の父親とかに殴られたくないし面倒事はなるべく避けたい。


『ねぇ、洋平君。今週の週末って空いてる?知り合いから映画のチケット貰ったんだけど、良かったら一緒にどうかな?』


千花が自転車の後ろに乗りながら聞いてきた。

言うタイミングはいくらでもあったのに、今言うところが千花っぽい。


『映画?別にいいよ。
でも見てる途中で寝ちゃったらごめんね?』

『はは、洋平君そんな感じだよね』

『うん、寝るつもりはないんだけど』


暗い所だと無意識にまぶたが落ちる。そもそも映画はDVD借りて見る方が多いし。

-----------その時、背中に千花の体温を感じた。


いつもは軽く掴むだけの手もぎゅっと力強い。


『千花?』


『……もう家に着いちゃうね』


千花の声は風にかき消されるぐらい小さかった。

確かに今日は会う時間が短かったけど、千花がこんな事を言ってきたのは初めてだ。



『時間が平気なら遠回りして帰るけど』

俺がそう言うと、千花は答えのようにまたぎゅっとした。