担任は真剣な表情で私をじっと黙って見つめていた。


そしてその表情のままふっと鼻で笑う。



「ああ、それでいい。さ、そうとなったら早く帰れ。雷鳴るぞ」


「はい、失礼しました」



半ば脅すように担任は静かにそう告げ、私は席を立った。


これだけのために、担任は私を教室のある1階から階段を2階分上ったこの部屋へ連れてきたのかとふいに思う。

雨が降り出さないうちに早く帰りたかったのに。



階段を降りて昇降口に着く。

そして空を見上げる。



「……降ってるし」



結局、雨が降り出していた。

大粒の雨が強く、地面を叩きつけている。


これじゃ、自転車で傘を差しながらは無理かな。


歩いて帰ることにして、リュックから折りたたみ傘を取り出し、空に向かって開いた。



空は曇天よりも暗いような、明るいような、よく分からない明るさ。

その上、雷が鳴りそうな、重たく黒い雲もある。


もうすぐ、雷が鳴るんだ。


雷が大嫌いな私は、つい傘を前に倒し、足元だけを見つめて足早に帰路を進んだ。