かさの向こうに縁あり

それでも笑い続ける平助を横目に、私は口に入れていた煮物を噛み、飲み込んだ。


ただのおいしい煮物だ。



「虫とか何も入ってないから安心してね」



さっきみたいなこと言われて、安心できるかって!

……とは思いつつも、つい食べてしまう。


どうやら私は素朴な味に負けてしまったみたいだ。



黙々と食べ続けていると、障子に人影が浮かび上がった。

立っていると思われるその影は、一旦止まってから小さくなった。



「――よろしいでしょうか」



そして突然、声がかかる。


それに対して平助は一瞬で無表情になり、わずかに沈黙した。

しかし何かを感じ取ったのか、「どうぞ」と障子の向こうに向けて一言告げた。


すると障子が静かに開かれる。


そこには、正座をした一人の男性がいた。



「藤堂先生、伊東先生がお呼びです」


「あ、中村君か。今行くよ」



そう答えると、「中村君」と呼ばれた、微妙にいかつい顔つきの青年は去っていった。