見渡す限り、全てが赤い。

大量の血を含んだ赤い沼の中を、底を目指して頭から落ちていく。


私は白い薄手のワンピースだけを身に纏い、裸足のままだ。


そして胸が苦しい。

誰かに強く締め付けられているような。

同時に咳もしたくなる。



――また、あの夢だ。


今日でこの夢を見ること何度目だろうか、それでもまだ続きはあるらしい。


もしかしたら、これからはこの夢ばかり見させられて、夢を見ない日がなくなるんじゃないかな……



『――ねえ、ひ……』



唐突に、頭の中に男性の声が響く。

それはたちまちこだまして、エコーがかかったように聞こえた。


今までの夢の中では一度も聞いたことのない、優しい声音だ。



『い……にみ……いいよ?』



かと思えば、その声で私に問いかけてくる。


何かへの悲しみを帯びているようにも聞こえる。

それは何への悲しみなんだろう……