呆れた視線を土方歳三に向けていると、彼は咳払いをして肘置きから肘を離した。



「昨日の言葉は撤回だ。ここにいるか否かは、お前の好きにしろ。出ていく場合は……分かってるな?」



女はいらないとか何とか言っておきながら、私の判断に委ねる。

それでも私が脱出したら殺す気満々。


結局、私はここにいるしかないらしい。


何なんだこの男は。

中途半端に別れた苑さんのことも気になるのに……



「ああ……俺は新選組副長、土方歳三だ」



はあ……知ってますよ、そんなこと。

なんて思いながら、とりあえず彼と視線を交えた。


ずっと黙って座ったままの私を見た彼の眉が、ぴくりと動く。



「ほら、分かったらさっさと出てけ!」



怒っているようには見えないが、障子の方を指差しながらそう言われ、私は立ち上がってすぐに部屋を出た。


縁側に出てふいに空を見上げる。


そこには朝見た時にはなかった小さな白い雲が、ぽつりぽつりと浮かんでいた。