かさの向こうに縁あり

そんな門番のことなど気にもせず、門を抜けるとどうやら大通りに出たようだ。


ここがどこか分からなくても、足は止めずに走り続ける。

どこか、優しい人のいる所へ。


無論、体力に自信はない。

でも足を止めたら、やはり捕まえられて殺されるに違いない。


それが嫌だから、私は脱走してきたんだ。


……まぁ、問題は山積みだ。


どこか宛てがあるはずもなく、このまま走り続けて誰の家にも受け入れてもらえなければ、下手をすれば野宿だ。

それだけは免れたいけれど。

なんだか有り得そう……



暫く走ると、大通りから小路に入った。

道が細くなり、家々が迫っている。


未だに追いかけられている気配はしないし、家の外にも誰の気配もしない。


予想した最悪の場合が現実になりそうだ。



「はっ、はっ……」



何分走っているのだろう、16歳の私はさすがに息が切れてきた。


『体力のない人に走らせるな!』


……と言いたいところだけれど、残念ながら私を走らせているのは紛れもなく私だ。


誰かは外に出ていると考えていた私は、甘かった。