かさの向こうに縁あり

今になって緊張してきて、冷や汗が至る所を伝っていく。


ど、どうしよう……!


この状況で戻ったら、絶対にあの“鬼の副長”に殺されるに決まってる。

かと言って、門を走って出られたとしても、すぐに門番に捕まってしまうだろう。


そんなことを思いつつも、何故か私は足を進めることをやめようとしない。


徐々に門は近くなっていく。

私が進む方を見つめる門番にも、徐々に近づいていく。


もうここまで来たら逃げ道はない。

決意を固めるしかない。


ーーもういい。

捕まってもいいから、何とかしてでも脱走してやる……!


さらに忍び足で、気づかれないようにそろりと進んでいく。



この時代には行き場なんてない。

この時代にも、居場所なんてない。



ここにただ存在するのは、人の心を無くした鬼。



あんな“鬼の副長”と呼ばれる人がいる所で、その上男所帯なのなら、私はこの場所を居場所にはしたくない。


もっと静かでのどかな所を居場所に選ぶ。


今からそれを、探しに行くんだ。

“脱走”という名目で。