かさの向こうに縁あり

ただ闇の広がる、深夜になった。


夕飯を持ってきてくれてから平助は部屋に来ない。

私は昼寝もせずにただ布団の中で頭を働かせていた。



平助が来ないうちに、私は床の間に置かれたバッグを手に取り、中を確認した。

ケータイ、お財布、教科書、ノート、筆記用具……


現代の持ち物、特にケータイなんて今は役に立たない。

二つ折りのケータイを開けても画面は真っ暗、電源を入れようとしても入らない。


役に立ちそうなのは、ノートと筆記用具のみ。

でも今それを使ってしまったら、異人というよりは変人になってしまうような気がして、バッグに押し込んだ。


綺麗に畳まれた制服も、平助が持ってきてくれた筆や紙、墨までも、無理矢理に詰め込んだ。



そうして荷作りは終わり、布団から出ようとしている今に至る。


もう考えるのはやめた。

いくら考えても、私はこの場所のことを何一つ知らないから、どこへどう逃げていいのかなんて分からない。



重い腰を上げて、布団から出る。


季節は冬……だからか、空気が冷たく張りつめている。

薄い着物だけを纏った体が、徐々に冷えていく。