かさの向こうに縁あり

「この羽織は幕末の新選組という組織で使われていた、今で言うユニフォームみたいなものだよ。しかもただの組織じゃない」


「ふーん」



その時、組織の名前は“新選組”と言っていたのを、ほぼ聞いていなかったにも関わらず覚えている。


でも、それに続くたった一言には、さすがに反応して思わずテレビ画面を見つめてしまったんだーー



その一言は、私が今平助の前で全てが停止している理由に繋がっている。


つまりは、あの一言を思い出してしまったということ。


今、はっきりと父の声で、耳の奥に鮮明に聞こえてきた。




『人々から恐れられた、人斬り集団だったのさ』




その一言のある部分が、やけに強調されて繰り返される。



“人斬り集団”ーー



もしそれが本当のことだとしたら、私は簡単に殺されてしまうに違いない。

だとすれば、早くここからの脱出を試みるより他はない。



「妃依ちゃんってば!」



名前を呼んでも何も反応を示さない私を心配して、平助に両肩を掴まれたことに気づく。


一気に現実へ、いや、今も現実のことを考えていたのだけれど、引き戻された。