かさの向こうに縁あり

そして同時に、はっとして今更ながらあることに気づく。

それを素早く筆を動かし、平助に見せた。



『今はいつで、ここはどこですか』


「えっと……今はね」



そういえばそうだった。


目の前に居る平助は、何故か着物を身に纏い、その上私も着物に着替えさせられている。


明らかに時代が違う、そんなことは初めから明確なはずなのに。


平助は指折り数えると、私に告げた。



「慶応三年三月十四日、ここは京の西本願寺だよ」



あまりの衝撃に口を開けることもできず、ただ私は凝視するしかなかった。


慶応、京、だって……?


歴史が嫌いでも、その言葉は聞けばすぐに分かる。


ここはやはり、江戸時代だ。

しかももうすぐ明治になる頃……だと思う。


さらに3月14日は、“私の生きる日本”ではホワイトデーで街が賑わう頃。


京、というのはきっと京都で、偶然にも父が出張に行っている所だ。

時代は違えど、何か縁を感じる。



「……記憶、ないの?」



徐々に脳内だけで状況を理解していくうちに、目は理解度に合わせて見開かれていく。

そんな時、平助に声をかけられ我に返る。