かさの向こうに縁あり

藤堂平助の姿が見えなくなると、また静かになってしまった。

そんな中、ふいに藤堂平助の言葉を思い出した。


筆と硯と紙、か……


何だか懐かしい気がする。

書道なんて久しぶりだ、とか、書道部らしくないことを思ってみる。



実は私は小学生や中学生の時、書道の賞をいくつも貰っていた。

だから高校では部活に書道を選んだ。


他の誰よりも、上手く書ける腕だと自分に自信過剰だった。



「お~、上手いね!」



入部してすぐ顧問にそう言われたのは、私ではなく同じ学年の他の部員だった。


どうして私には褒め言葉の一つも言ってくれないの……?


ただ褒め言葉が欲しかった。

ただ何でもいいから、一言が欲しかった。



でもそれからだ、私が書道をやる気がしなくなり、部活に行かなくなったのは。


自分なんかいなくたって、部活はいくらでも進んでいく。

だから私よりも上手い人が書いていればいいじゃないーー



今考えれば、その考えは自分勝手で醜いものだと思う。


もう一度高校生活を初めからやり直せるものなら、そんな醜い考えを捨てて、自分の道を行きたい。



他の誰かを気にしていたら、それはそれは生きづらいから。