かさの向こうに縁あり

もしかして、と勢い良く顔を上げて再び藤堂平助を睨む。


すると彼の頬はみるみるうちに赤く染まっていった。

つられて私も顔が熱くなる。

そしてついに彼は私から顔を逸らした。



「い、いや……別に女の子に興味があって着替えさせたわけじゃ……勘違いしないで!」



まるで私が殴るとでも思っているのかのように、手のひらを向けて両腕をこちらに伸ばしている。

鬼を恐れるみたいにして。


私は何もする気もないし、ましてや怒るにしても声が出ないんだし。


とりあえず、藤堂平助の両腕を優しく掴むことしか、今はできなかった。



「はあ、殴られるかと思ったよ……」



そう吐き出すように呟いては溜め息をついた。



「君の着てた服と持ち物なら、そこにあるから。ね?」



そう言って床の間を指差した。

確かに制服がきちんと畳まれて、バッグも置かれている。


ついでに静まり返ってしまった部屋を、ぐるりと見回す。


いかにも和室としかいいようがない。

畳、襖、床の間、掛け軸、生け花、藤堂平助と私の着物、彼の丁髷。

和の雰囲気が漂う物しか、この場にはない。



本当にここは、江戸時代なの――?