かさの向こうに縁あり

――あれ、ここはこっちだっけ……いや、あっちかな?



昼の暖かい陽射しをあびて、屯所から遠ざかっていく。

手には紙の切れ端、他には何も持っていない。


八坂神社が見えてきたから、この辺りかな、なんて適当に曲がってみる。

分かりやすい道の造りをしている町だというのに、あっちかこっちかと細い路地をウロウロしながら歩く。


迷いすぎて、今歩いている道ももう何度通った道か知れない。

たった3日しか経っていないというのに、それくらい、進むべき道の記憶は曖昧だった。



仏光寺だったら、極端な話、一度曲がれば着くような簡単な道程だったはずだ。

それに昨日行ったばかりだし。


でも私は、こうして迷う方を選んでしまった。



「やっぱり仏光寺に行けばよかったかも……」



こんなに後悔するのには、訳がある。


さっき、副長さんに大嘘をついてしまったんだ。

自分でも意外だと思うほどの。




実は今、苑さんの家に向かっている。




もしかしたらあの場は盗聴されていたかもしれない、と副長さんの部屋を出る時になんとなく感じたから。


人の気配を感じたとか相手を出し抜くとか、決してそんな変な能力があるわけではないけれど、私の動向を気にして聞いている可能性がないとは言えないんじゃないかな、と思って。

相手は私ほど暇ではないとは思うけれども。


私ったら優柔不断にも程があるでしょ、とさすがに思いはするけれど、やはり疑いを晴らすことはできない。
決して。