かさの向こうに縁あり

「後悔なんてとっくにしてます。何なら今までの人生、初めからやり直したいくらいには」



そう笑って言ったのにも関わらず、少し間をおいて副長さんにまた溜め息を吐かれた。

今度は一体何なんだろう。



「ひよこ、案外暗い人間なんだな」


「ここにいると自然と明るくなっている自分が不思議で仕方ないくらいですよ、本当に」



何かと思えば、そういうことだったか。


友達との付き合い方が下手だったり、ちょっとしたことでムッとしたり、もう無理だと物事をすぐに投げ出したりする……私はそんな人間。


不器用に生きてきた私は、どこまでも不器用でしかない。



「その選択は間違っていなかったと俺に示してくれよな」



まるで自分が責任を取ると言っているようだった。

そしてそれは、“無事に帰って来い”という意味を含んでいるように聞こえた。


直接言わないのがまた副長さんらしくて、なんだか憎い。

けれど本当には憎めなくて、複雑な笑みを浮かべた。



「はい。相談に乗っていただいて、ありがとうございました」



人に頼らずには生きていけないんだな、と今さらながらそんな基本的なことに気づけた。

やっぱり副長さんに相談してよかったと心底安堵して、彼の部屋を後にした。



桜が綺麗だ、好きだって、素直に感じられるといいな、と思いはしたけれど――




私は、彼に、嘘をついた。