かさの向こうに縁あり

やはり今日も副長さんはご立腹、いや、ご機嫌のようだ。

軽く取っ組み合いでも始まりそうな気がした。

怒らせているのは私だけれど、これがなかなかに楽しいことに気がついてしまった。


周囲から常に平常心であるように思われているような人をこんな風にさせる私は、不束者だし正直言って厄介者だろう。


そう唐突に思うのと同時に、私のためにちょっとでも時間を割いてくれるこの人に、今後申し訳が立たなくなりそうだと思えてきた。


どこの馬の骨とも知れぬ私を、どこまで本気で心配してくれているのかは分からないし、もしかしたら上辺だけかもしれない。

だけれど、こんな奴と関わったが故に、という面倒事が起きてしまったら、なんて少し彼から視線を下にずらして考えていたら、ふっと謎の笑いがこみ上げてきた。



「そんなに心配してくださって嬉しいです。……でもやっぱり、行ってみることにします」



「桜も綺麗な所なので、また見たいですし、それに暇ですし?」とさっきの言葉に言い返すように付け加える。

再び副長さんと視線を合わせると、「いきなり何言ってんだ」と言いたげな表情で、副長さんは私を見ていた。



「……格好つけてると後悔するぞ」



たしかにそうかもしれない、と思って、そっと目を伏せる。


今まではほとんどの物事をややこしく考えては、人様に迷惑をかけまいとひたすら独りで生きていく努力をしてしまっていた。


決して格好つけているつもりはないけれど、でもそれって結局のところは格好悪いんだろうな……