かさの向こうに縁あり

「だが、ひよこ。お前はもう決めてるんじゃないのか?相談するまでもない顔をしているような気がするんだが。どうだ」


「え……」



どうやら私は彼が見抜けていなかったらしい。

逆に私が見抜かれていた。


さっきの「ノーコメントです」と言ったのは、図星で答えられなかったからだと思うけれど、これは当たり前のことだけれど、彼にはその言葉も意味も伝わっていない。

その意味が分かっているのとそうでないのとでは、まったく異なる、真逆の台詞を導くことになるだろう。


でもその言葉や意味は関係なく、客観的に見た私の表情は、すでにこれと決めた顔をしていたらしい。


たしかにさっき、行こうと決めてみたけれど、自分一人の決断だけでは不安要素が完全には取り除けなかったから、ここへ来たというのに。



「……でも、よく知らない人の言うことって、そんなに簡単に信じられます?」


「俺は絶対に信じないがな。局長に指示を仰いだりする。ひよこのもそんな感じだとは思うが、どうも行こうとしてるように見えるんだよ」



彼は呆れたようにため息をついて、深く目を瞑ってから再び私を見る。

私はといえば、相談しようと思ったことを、今から撤回したいくらい後悔し始めていた。



「ま、そんな風に思うのも、単に暇を持て余してるからってところだろう、どうせ」



暇とはなんだ、と一瞬ムッとする。

「たしかに暇ですが、好きで暇してるわけじゃないんで!」と言ってやりたいけれど、まあたしかに、それも一理あるのかもしれない。

全体の1割にも満たない気持ちだとは思うけれど。