かさの向こうに縁あり

「言ってきた奴は知ってる奴なのか?」


「いえ、知りません。でも、昨日この部屋の場所を尋ねた人です」


「怪しいと思ってんだろ?」


「……ノーコメントです」


「のう……?は?」



突然、日本語として聞き取れない言葉が出てきたために、副長さんは思考が停止したらしい。

ぽかんとしている。


しまった……ついカタカナ英語を使ってしまった。

あっと口を開け、額にはうっすらと汗が滲んでくる。


そういえば、今まで一つも使わないようにしていた気がする。

使ったら尚更怪しまれると、どこかで思っていたんだ。


それに、取り繕うのは昔から苦手だ。

だから嘘を貫き通すのは無理で、嘘だっていうのが見え見えだし、私の性格ってつくづく損してばかりな気がする。



「と、とりあえず!疑っているからここに来たんです、私。先ほども言いましたけど、土方副長になら相談できると思いまして」


「ほお……?」



彼はそう言って自らの髭のない顎を軽く撫でる。


私だって変な心地なんだから、彼の方がさらに物珍しく感じるのは自然だろう。


“ひよこが鶏になった”とか何とか、さっきは言っていたけれど、本当に私の彼への接し方が変わってきたことを不思議に思って驚いているように見える。

でもあの台詞の実際は、私を貶したもので、“成長した”というよりは“うるさくなった”と言われたような気がしなくもないけれど。