かさの向こうに縁あり

きっと彼が言いたかったのは、「お前、俺と張り合えるくらいに言うようになったな」って感じのことなんじゃないかと思う。

たしかに、たった数日間のうちに、知らぬ間に本音を言うようになってしまった。


高校での生活の中でも、あまり言いたいことがあっても直接言ったりはしない、無口に近い性格。

それなのに、逆に何だかもう隠すのも面倒に感じるし、副長さんが私に対してはそれほど怖い印象を抱かせないようにしているような気がしたからだ。

それは“外の顔”の一面なのかもしれないけれど。


初めこそ、私は彼に殺されることばかり考えていたけれど、実際そんなことはなかったのだし。

昨日忠告してくれたように、少しくらい頼りになりそうだとも感じたし。



「とりあえず、土方副長のお部屋で話しませんか?」



こんな所で時間を食うのは嫌だ、早く事を済ませたい。

それに、以前副長さんが、自分の部屋に頻繁に出入りしているのを見られるのはあまりよくない、というようなことを言っていたけれど、立ち話じゃ余計に目立つし、気を遣ったのもある。



でも、彼は私から視線を外し、私の頭上を越えて何もないはずの背後に向けた。



「……おっと、先客みたいだ」


「え?」



突然そんなことを言われ、一瞬何だろうと思ったけれど、思案する間もなく私はその視線を追うように、後ろを向いた。



そこにいた人物と向き合った瞬間、思わずどきっとする。



私から3mほど離れた所にいたのは、いつも通り飄々として立つ、平助だった。