かさの向こうに縁あり

「あれはな、調練の銃声だ」


「へ、へー、それであんな物騒な音が……」


「まあ、驚くだろうな。大砲も使うが、ひよこが来てから一度もやってなかった訳じゃないぞ。ただお前がいなかっただけだろう」



そうかな、と思い出してみると、たしかに私が一日中いたのは、たった2日くらいなものだった。

普段はそうでもないのに、この世界では意外とフットワークが軽くなっているらしい。

そうならざるを得なかったと言うべきか。



それよりも気になったことがある。

お寺で銃や大砲の訓練をするなんて、なんて罰当たりなことか……と。


まず新選組がお寺に本拠地を構えているということも、今考えてみれば何かおかしい気がした。

この時代のことは何も分からないから、何もおかしいことはないのかもしれない。

けれど、これは何か裏があるに違いないと思った。



私が、はて、と考えていると、目の前に立つ副長さんはふっと鼻で笑った。



「居場所ないって言うわりには、彷徨くのは得意なんだな」


「居場所がないのと彷徨いてるのはまた別です!」



何かと思えばそんなことを言われる。


“彷徨いている”という表現にもつっこみたかったけれど、こんな所で油を売っている暇はなかった。

偶然出くわしたけれど、私は副長さんに用があったんだった。