かさの向こうに縁あり

どこかで見たことがあるな、と思ったら、この男性は昨日私が副長さんの部屋を尋ねた人だ。

相変わらず、私がイメージする現代で言うヤンキーのような表情で怖いけれど、よく見てみれば身なりはそう悪くない。

こんな人が私に何の用だろう。



「あの、昨日はど」


「藤堂から伝言だが、昼頃、昨日行った寺に来てほしいと言っていた」


「……え、平……藤堂さんが?」


「ああ、そうだ」



とりあえず昨日のお礼を、と思ったら、思いきりその言葉を遮られる。

そしてこの男性は驚くことを言い放った。


平助からの伝言だって?


もう会わないと思っていたからか、喜ばしいような、そうでもないような、微妙な気持ちになった。

たしかにちゃんとした別れの言葉は告げていないし、平助は私を気にしてくれているんだと思うと、嬉しいような気もするけれど。

でもやっぱり……



「だから昼はそこへ行け。いいな」


「え、あ、はい……」



答えは「はい」以外認めないような雰囲気のなか、思わずそう返事をしてしまった。

考え事すら許さないような感じだ。


それだけ言うと、強面の男性はどこかへ去ってしまった。

自分勝手というか何というか。

正直、こんな男性の言うことを信じていいのか、と自問自答したら即信じるなと私の頭は答えるだろう。