かさの向こうに縁あり

結局、朝ご飯は原田さんが持ってきてくれて、部屋で食べた。


気づけば、原田さんにも色々とお世話になってしまっている。


初めこそ彼は尾形さん、尾関さんと共に“覗き団子”の一人だったし、ただ楽しいだけの人、楽天家だと思っていたけれど。

それは私の誤解だったらしい。

人のことをちゃんと見てくれていて、その上アドバイスもしてくれる、しっかりした人だ。



――なんて、縁側に座って脚をぶらぶらさせながら、失礼だけれど上から目線で考える。


平助がいなくなったって、原田さんや副長さん達のような話せる相手がいる。

それなら大丈夫だ、と自分に言い聞かせた。


ふう、と息をつく。


今日は3月21日。

少し肌寒いくらいの気温が心地よくて、春の香りもしてなお良い。

周りはすっかり春に向かっていて、私だけが取り残されているような気になっていた、けれど。


なんだかんだで私はやっていけそうだよ、平助――。




「――おい、娘」



ふっと微笑んでいると、庭の方からふと呼び止められた気がした。

ぶらぶらさせていた脚を止め、声のする方を向くと、一人の男性が私を見ていた。



「……私ですか?」


「そうだ、お前しかいない」



ああ、そうだった、たしかに今ここに女は私しかいない。

聞かなくてもそんなことは分かっていた。