私が言いたいことはそれだけじゃない。

拳をぎゅっと握る。


何を言っても平助は考えを変えないはずだ。

普段は暢気な青年というイメージがあるけれど、実は案外内で考えていそうなタイプの人間だと思う。

それだからこそ厄介だ、とも思う。


平助は私の方に向き直って、視線を交えてきた。



「何日も前に決まっていたことだけど、別に妃依ちゃんには言わなくてもいいか……って最初は思ってた。でも考え直したんだ。どうしても言わなきゃいけない気がして」



そりゃあ言ってほしいですとも、と思ってつい口に出しそうになる。


平助の存在が、私の中で"ただ私を助けてくれた恩人"というだけではないということだ。

それくらい、大きな存在なんだ。

それをたった今、実感した。



だからこそ辛いものがある。

気づいてしまったらもう、だめだ。


これからの生活が、平助のいない生活が怖い。



彼の視線から目を逸らし、俯く。


地面には桜の花びらが散らばっていて、それを踏み付ける私と平助がいる。


私はこの散った花びらみたいだな、と思い、ふっと鼻で笑う。

抱いている気持ちを無視されているような、そんな感じがして。