かさの向こうに縁あり

春と言えば、“出会いと別れの季節”、とよく言われる。

私はそのどちらも、この世界で経験することになるのだろうか。


そういえば一昨日、彼は百人一首の歌を見て“この部屋と同じだ”と言った。

人が出会っては別れる逢坂の関が、私がいさせてもらっている部屋と同じだ、と。


やっぱり、そういうことなんだ。



「ねえ、平助」


「何?」



もういい、聞いてしまおう。

平助には言うな、悟られるなって、副長さんには言われていたけれど、やっぱり本人から聞かないと納得できない。

出会って数日しか経っていないから隠し事されていても仕方がないし、私もそれでいいと納得してしまったけれど、前言撤回。


どんな答えでも、私は受け止める。



「どうして分離する隊についていくのか、理由を聞かせて」



あまりにも唐突で予期せぬ発言だったようで、平助は足を止め、目を丸くして私を見た。

同時に私もゆっくりと歩みを止め、彼と正面から視線を交える。


それもそうだ。

彼自身の口からは、そんな話など微塵も聞いていなかったのだから。


「……どうしてそれを」


「副長さんに聞いた。……本当は口止めされていたけど、平助から直接この話を聞きたくて」


「そう、なんだ……」



私を見ていた瞳を伏せる。

副長によって全てお見通しなんだな、とでも思っているのだろうか。


平助がいない間に副長さんと話す機会が何度かあったから、情報が入りやすくなったのは事実だ。

でも全てをお見通しというわけではない。