かさの向こうに縁あり

“人斬り集団”と後世で言われるような組織がある世の中だから、周囲に気を付けて当たり前なのかもしれないけれど。

もしかしたら、平助にならその理由が分かるのかもしれない。



「それって……誰かが妃依ちゃんを……」



そこまで言って言葉を詰まらせ、彼ははっと何かに気づいたような表情をする。

横顔でも分かるほどだ。

何か思い当たる節でもあったのだろうか。


でもそれは……平助の周辺で、あの行為をする可能性のある人物がいるということを表している。

さらに推測すれば、そこに原因があって、私がストーカー紛いのことをされたということになってしまう。


そんなことは考えたくない。

そんなことはありえない。


なんだか動悸がする。

この話題もだめだ、と思って、都合良くまた話題を変えようとした。



「ねえ平助……まだ着かない?」


「え、ああ……もうそろそろかな」



唐突の投げかけに、平助は何かを必死に取り繕うように答えた。

やはり何かに気づいたのだろうか。


また隠されていることが増えてしまった気がするし、平助がどんどん遠い存在になっていくようだ。



「どこに向かってるの?」


「あれ、言ってなかったっけ……ま、お楽しみだよ」



そう言うと平助は人差し指を唇の前に立てる。

「天気がいまいちだから、そこまで綺麗じゃないかもしれないけれど」と付け足した。