かさの向こうに縁あり

あのなんとも無慈悲な彼は、武士の家の人間ではないということに。


私はてっきり、“人斬り集団”=全員武士の集団だと思いこんでいた。

まだまだ何も知らない。



「局長の近藤さんもそう。でも身分なんて関係ない。皆、この国のために日々を生きているんだ」



知ることが山ほどある。

それは時代が異なる故なのか、私が歴史を知らなさすぎる故なのか。

きっと両方だと思うけれど、ほぼ前者が理由だと思う。


同じ日本なのに、私の先祖も暮らしていたであろう世界なのに、現代とはあまりにもかけ離れすぎていて。



「ん、どうかした?」



不安を通り越して絶望に似た感情がふつふつとわいてきた時、平助に声をかけられた。


今のように、本当に平助は心配性だな、と思うことがよくある。



「あ、うん。なんでもない、大丈夫」


「そう?体調悪かったら言ってね、その時はすぐに戻るから」


「……ありがとう」



心配性なことに加えて、素直に接してくれる。

こんな人の隣にいると、自然と素直になれる気がしていた。


普段は冷めた態度の人間だったからか、友達も思うようにできなかった。

でもここでは、おそらく珍しいから、という理由だろうけれど、人が寄ってきてくれたり、その人達に対してわりと感情を表に出せたりしている。


現実の自分とのギャップがすごくて、時々、いや、今も驚いている。