かさの向こうに縁あり

そうと決まったら、元々進んでいた方向へ、並んで歩き出す。

こうして二人で外を歩くことなんて今までなかったから、新鮮で少しだけ緊張する。

無言になるかと思いきや、平助が「それに」と付け加えるように呟いた。



「俺達、ゆっくりと話す機会、全然なかったしね」


「……うん、そうだね」



平助に気づかれないように、そっと微笑む。

なんだかこういう時間は、私には似合わないな、と思いながら。


同じ場所に住み、ついでによくお世話してもらっているのにも関わらず、お互いのことを知らないまま6日が過ぎようとしている。

それはそれで普通のことなのかもしれないけれど。


「1日くらいこんな日があっても、ま、いっか」なんて思いがぱっと湧く。

一人のことくらい詳しく知っていた方が、男所帯で暮らしていくには何かと都合がいいような気がした。


それに、平助のことを詳しく知らずにここまで過ごしてきたから、色々と教えてほしくて。



しばらくして、平助は自分から話し出した。



「まず俺のことからでいいかな?そういえば、生まれとかそういうのも話したことないよね。……生まれは江戸でーー」



江戸なんだ、じゃあ江戸っ子気質なのかな、と思いながら聞いていく。