かさの向こうに縁あり

「何してるの、妃依ちゃん?」


「わっ!!」



驚きのあまり、後ろに飛び跳ねる。

ついでに危うく転けそうになった。


でも、その声と姿を認識すると、危険を感じる必要もなければ、驚く必要もない人物だった。


ーー平助だ。


今日は初めて見るけれど、たしか“巡察”とかいうのに行っていたはずだ。

彼が一人であるところを見ると、どうやらそれは終わったみたい。



「お、驚かさないでよ、平助……」


「はは、ごめんごめん。でもどうしたの、あんなに怖い顔して」


「……ちょっと色々あって」


「ふーん?」



そう言っては、彼は怪訝な顔をして、また顔を覗き込まれる。

そんなに私の表情が怖かったのだろうか。


悟られないように、気を遣われないようにと無理に微笑む。



平助についていくか、男所帯の屯所に留まるか。


その選択に迷っている私を、何とかして隠さなければ、と思って。


どうにか隠し通せているようで、それ以上は平助は何も踏み込んで聞いてこなかった。