かさの向こうに縁あり

男の人に抱き締められるなんてこと、これまでに一度も経験したことがない。

ましてや、そんなことは自分には起こり得ないことだと、思っていたというのに。



この世界に来てからというもの、あっさりと様々なことが覆されてばかりだ。



私が困惑しているということを感じ取ったのだろう。

平助は部屋に入ってきた時のような俊敏な動きで、ばっと私を抱き締めていた腕を離し、正座をした。



「ごめん……つい嬉しくなっちゃってさ」



平助は視線を逸らし、照れたようにそう言う。

彼の喜ぶその気持ちに、なんだか私も嬉しさを感じた。


人のことなのに、まるで自分のことのように喜ぶ。


こんな人は初めてだ……



「大丈夫。謝らないで」



抱き締められたことへの戸惑いを表に出さないように心がけながら、そう言って取り繕う。

眉の形が、おそらく八の字に近くなっているような表情だと思う。


それでも平助は私に満面の笑みを向け続けた。



「これから色々な話がちゃんとできるね!」


「うん……私も自分のこと話すから、平助のことも……教えて?」



微笑んで私がそう答えると、一瞬、平助の表情が曇ったように見えた。