かさの向こうに縁あり

「……は?」


「だから妃依ちゃんの、声がな……!」



平助は若干キレ気味だ。

それに対して、原田さんはまた焦っている。

どうやら自分の言い方に問題があったことに気づいたらしい。


でも、時すでに遅し。


私は平助と見つめ合う形になっていた。


思いきって、勇気を出して。

私は声を発してみようと思った。



「ーー平助……声、出ましたよ……!」


「……妃依、ちゃん?」



私の声に対して、平助はゆっくりと目を見開く。

私や原田さん以上に驚いているらしい。


数秒の沈黙の後、平助は俊敏な動きで勢い良く部屋に入ってきた。

そこまでは、驚いた後の動作の一環として当たり前だった。


そう、その後に予想していないことが起こったんだ。



平助が私を、抱き締めるなんてことがーー



「妃依ちゃん!よかった……本当によかった!」



そう言って平助は喜びを噛み締めるように、私を力強く抱き締める。

私はただ呆気に取られて、動くことができない。