かさの向こうに縁あり

この時代に来てから、四回目に通りに出る。


夜中に来て、昼間に平助に強制連行された一往復。

そして今日、苑さんの家に行って、今から帰る一往復。



相変わらず道は覚えられていない。

けれど、何とかすれば屯所に着くんじゃないかな、と暢気に考える。



京の街は碁盤の目状になっているし、小路も多くあるから迷いやすいのかもしれない。

でもこの時代、小路なんて入りたくない。


この時代に来た時に襲われたことを思い出せば、そう思う。

思い出せば、思わず体が固まる。



あれが、私が声が出なくなった原因であり、平助に出会ったきっかけでもある。



結果的に出会って良かったんだか、悪かったんだか……

そんなのはまだ分からない。


平助ともっと会話して、お互いのことを知るようにならないと。


きっとそれから結果が分かるはずだ。



あたかも現地の人のように、私はずんずんと歩き続ける。

視線なんて気にせずに。


でも、その中で一人だけ明らかにこちらをじっと見つめる視線を感じた。



「――あれ、妃依ちゃん?」