かさの向こうに縁あり

「いいのよ、答えられないことなら」



あまりにも唖然としている私に、苑さんはそう言った。

苑さんはいつもそう言って、深く踏み込まない。


何だか申し訳ないな……

隠し事を隠し通すのって、案外、嫌な気持ちになる。


そこではっとして気づく。



平助は何か私に隠しているんじゃないか、って。

そういえば態度が違っていたかもしれない、って。



何だかんだ言いながら、私は平助のことが気になって仕方がなかった。

特に昨日の“あの”態度とか。



隠し事をしている人は、きっと誰もが罪悪感を少なからず感じているはず。


そして平助も同様に、それを感じているんだろうな……なんて。

今さらながら気づいてしまった。



そうとなったら、今すぐ平助に問い質したい。

何を隠しているのか、聞きたい。


何だか居ても立ってもいられなくなってきた。



『残念ですが用事があるのでそろそろ帰ります』



ささっと、素早く書いて、苑さんの眼前に示す。