かさの向こうに縁あり

「はい、これね」



一昨日私がいた部屋に通されると、まとめられた荷物を隅の方から持ってきてくれた。


頭を軽く下げて受け取る。

私のバッグが、二日ぶりに手元に戻ってきた。


今この時代では何の役にも立たない物ばかりが、私の手にずっしりと乗る。


「やったー!」と喜ぶ反面。


何だか今の私の気持ちみたい。

気になって仕方がないことに対しての……


それは二つある。

一つは、苑さんに話したくても話せないことがあること。


もう一つは……平助のこと。



「……ねえ」



荷物を受け取ったまま思案していると、正面に立つ苑さんが遠慮がちに声をかけてきた。


それは荷物を持って立ち尽くす私に、どうしたのかと聞くのかと思いきや。



「また一つ聞いていいかしら?」



これから話を広げる質問だった。


不意を突かれた。

けれど、私は承諾を表すように頷いた。



「妃依ちゃんって、どこから来たの?生まれは?」



あれ、そうきますか!

なんて、実は身構えていたところに、また不意を突かれる。