かさの向こうに縁あり

結局、無言のまま私達は苑さんの家に着いてしまった。


私は無言で当たり前だけれど、それでも苑さんは何も話そうとはしなかった。


一昨日出会ったばかりの人だ。


そんなに詳しく話したくなかったし、第一、新選組に旦那さんを殺された彼女には話せないし。



何だか“こっち”に来てから、複雑な心境になりやすいな……



「さ、上がって上がって!」




なんて考え込んでいると、苑さんにそう声をかけられる。

いつの間にか彼女は部屋に上がっていた。


苑さんはいつも通りの笑顔で、と思ったけれど、ちょっとひきつった笑みを浮かべているように見える。



この人はきっと物事をあまり気にしすぎない人なんだと、勝手に思っていた。


でも、実際はどうやら違うみたい。


彼女は、私に心を開いてほしいんだと思う。

でも私が真実を話さないから、きっと少し寂しいというか、悲しいというか。


きっとそんな感じなんだと思うけれど。


結局のところ、真実なんて分からないままで。