かさの向こうに縁あり

なんて都合のいいやつなんだ、私は……とか思いつつ、話を変える作戦に出た。


なんてヤツだ、って思われてもいい。

とりあえず、今のこの関係を続けたかったんだ。



この時代で、唯一知っている同性だから。


この時代で、分け隔てなく接してくれる一人だから。



「あ……ええ、いいわよ」



驚いたような、躊躇うような。

そんな表情で苑さんは私を見た。


紙を下げると、彼女は「さ、行くわよ」と言って再び歩き始めた。



それから私達は苑さんの家に向かった。


そういえば昨日見た気がするような雰囲気だな、と思う。

でも私の目には、どの景色もそんなに変わらないものとして映る。


確か、現代では町家と呼ばれていて、今は数多くは見られない建物。


それが、町の全体を埋め尽くしているように見えるから。

さらには、京都の町は碁盤の目のように広がっているから。


分かりっこない、なんて思いながら、私はただ苑さんの背中を追った。