かさの向こうに縁あり

苑さんの満面の笑みに釣られて、私は微笑む。

そして少し早足で、彼女に近寄った。



「心配してたのよー?昨日、突然いなくなっちゃったんだもの!」



苑さんはどこに向かっているのか知らないけれど、二人で並んで歩く。


紙と矢立を取り出して、ささっとお詫びの言葉を書く。



『ご心配おかけしてすみませんでした』



苑さんには、すごく心配をかけてしまったし、迷惑にもなったと思う。


黙って消えた上に、荷物まで置いていってしまったのだから。


だから私が不便でならなかったのは、言うまでもない……

なんて、苑さんの家の場所を取ってしまった方を気にすべきところだけれども。



「いいのよ!無事でいたのならね」



そう言っては、ふふ、と彼女は笑った。


でもその後すぐに、苑さんの表情は一変した。


どうしてか真剣な表情になってしまったんだ。



「一つだけ聞いてもいい?」



何となく嫌な予感が押し迫る。

聞かれてはまずい質問をされそうな気がした。


息を呑んで、その問いが苑さんの口から発せられるのを待った。