かさの向こうに縁あり

その瞬間、ばっちりと目が合った。

同時に「いつものあの人」は目を見開く。


そんな「いつものあの人」は、すっかり覗き魔になった原田さんだ。


私は立ち上がって彼に近づいていくと、彼は何故か障子をピシャーンと音がするほど豪快に開いた。



「あー!すまんすまんっ!そんな気は……」



原田さんは慌てて後退ろうとする。


なんだかさっきから動きが意味不明。

普通、見つかったら障子は閉めるでしょ!


そんなことはさておき、私は手にした筆で紙にさっと書く。

その紙を原田さんの眼前に突き出すと、彼は防御体制をとり、一歩飛び退く。



『頼みたいことがあるんですが』



もう語尾に「!!」を付けたいくらい、いや、差し出した勢いはそれに等しかった。


一歩飛び退いた原田さんが、恐る恐る紙を覗き込む。



「あ?……頼みたいこと?」



てっきり怒られるものだと思っていたのだろう。

原田さんは私が書いた文字を見るなり、何度も瞬きをしている。


紙を一度引っ込め、隣にもう一文、こんな文を追加した。



『ここに女性はいますか』