かさの向こうに縁あり

じっと障子を見据えたまま、私はしばらくの間固まった。



何度も頭の中でリピートされる、平助の台詞。

そして不意に思い出したのは、声が出ていた頃の……一昨日までの自分。


――そうか、一昨日までは確かに声があったんだ。


友達と普通に会話してたし、先生と進路の話もしていた。


なんだか遠い日のことのように思えるけれど。

そういえばあったなあ、なんて。



でも、人に聞かせるような、そんな素晴らしい声してないし!

聞いて何かいいことあるのか、と正直平助に問いたい。


でも、まあ……



『妃依ちゃんの声、聞いてみたいなあ……なんて』



そんなこと言われたら、あれこれ考えていたら。


急に声が出したくなってきた。


声を失ったことすら忘れていた私は、努力して取り戻そうとすら思いもしなかった。

というか、そもそも何で声が出なくなったのかも分からないんだっけ……


平助の言葉が、いいきっかけを与えてくれたのかもしれない。



そうとなれば。

よし、今日から声を出す練習をしよう!