水平線の彼方へと消えて行く帆船。


アモスとレインはその影が視界から完全に消えるまで、世界の果てを眺めていた。


「……なぜ嘘をついたのですか」


少年は視線をそのままに賢者に問う。


アモスは口元に微笑を浮かべると、海風に乱れた白髪を掻きあげた。


「まだその時ではない」


「勇者様の力量が足りぬとでも」


「いいや違う。確かにまだ彼は若いが、勇者との素質は十分だ。揺ぎ無き意思と覚悟も備わっている。だが……」


口篭る。


水平線を拝める瞳は、さらにその先の”目に見えぬ何か”を捉えているようであった。


「彼が今聖剣を手にしたところで、魔王にその刃は届かない」


意味がわからない。と、レインの顔にはそう書かれている。