さとみはかつてのドジャーズ、野茂英雄ばりのトルネード投法で指輪を海に投げ捨てた。





「孝雄のバカヤロー!!」





さとみの心はしけの海より荒れていた。





原因は孝雄の浮気だった。





孝雄とさとみは結婚の約束までしている。





なのに、孝雄はさとみより10歳も若い大学生と情事を重ねていたのだ。






「うう・・・ちくしょう何で私がこんな目に・・・」






プライドの高いさとみは、孝雄に平手打ちをかまして別れをつげた。





だがそれは三十路のさとみにとって最大の婚期をのがしてしまったということ。





彼女の心を絶望が覆う。






「もう恋なんて・・・結婚なんてするもんか。うわーん」





さとみの叫びは海に反響して虚しくこだましていた。