人格を作り出すことなど不可能。


人工の体?

あり得ない。

常識はずれの奏を哀れむ目で見た圭はドカリと手近な椅子に腰をおろした。



「で?私の存在価値は?」

話が分かるな。

と笑い立ち上がった奏は圭に書類を渡した。


「お前は心臓提供者。患者はお前が選べ。」

十数枚ある書類を受け取り、圭は奏を見上げた。


手からすり抜けていく書類が彼女の動揺を表す。


「…私…死ぬの?」


心臓提供者。

早い話が心臓を抜き取り差し出す。

あげるに値する患者を選ぶのは圭自身。

命を失う価値のあるほど、生かしたい者…


「あぁ。」

なんの感情も見せず頷いた奏を睨み付け、圭は息を飲んだ。


「…おかしいよ!私は選ばない!」


怒鳴りながら立ち上がる圭。

「勝手にどうぞ。」


あっさりと食い下がる奏に拍子抜けしながら、圭は部屋を出た。