「強制はしないよ。
だけど考えて欲しいな…患者の生死を決めるのは圭だってこと…」



吹雪は小さく呟いた。

ズルい。

そんな風に言って私の罪悪感を刺激する…


「分かった…会うから…だから生死を決める。とか重い話ししないで。」


常に生死と向き合う吹雪達と違って、私はそれに対する抗体がない。


死と聞いて恐怖が生まれ、心の深い処に響き突き刺さる。防ぐことなど出来ない。だから死は怖い。



死の恐怖。

私にだってある。

移植=自身の死。

誰かを助けるには犠牲がいる。

新しい薬の開発の為には大量の実験体がいる。


歴史的快挙には必ず犠牲がある。


私は医学発展の単なるイチモルモットに過ぎない。

それがちっぽけな私の存在価値であり、生きる意味。



人が皆何か使命を持ち、役割を与えられているのだとすれば、私の生存理由は一つ。



心臓を提供することー…


恐怖が…とか

でも…とか。

本当は禁句。

だけど死に対する抵抗が抜けない私は、会うことだけ選択した。


ごめん。患者さん。

ごめん。吹雪に奏。

私は悪い子だ…。