僕とその男のヒトとが、同じ土手でそれぞれにぼんやりしている日々が一週間ほど続いたある日のことだった。


 突然そのヒトが、僕のところにゆっくりと歩み寄って来た。

「おまえ、野良なのか? 首輪してるみたいだけど」

 僕が初めてはっきり見たそのヒトの顔は、色が白くて透き通るようだった。


 そして、

「これ食えよ」

と言って、持っていたお菓子のようなモノを僕の前にそっと置いた。


 このとき僕は、この間ショコラが言っていた言葉をふと思い出していた。


 すぐに信用しちゃいけないよ――。


 食べ物らしきものを前に、珍しく躊躇する僕。

 僕のその警戒心は、すぐにそのヒトに伝わったようだった。

「大丈夫だよ。ドッグフードだ」

 そのヒトはそう言うと、お菓子を一つ食べて見せた。

「やっぱ、あんまりおいしくないな……」

 そのヒトがかすかに笑ったのを見て、僕はひとつ食べてみることにした。


 コリコリ……


 何だかとても不思議な歯ごたえだったけど、とてもおいしくて、僕はそれを全部食べてしまった。