「今日、これからどうしようかなぁ」

 家出してきたものの、特にすることも思い付かない僕は、仕方なく昨日歩いてきた土手に駆け上ってみる。


「あったかいなぁ」

 僕は土手に寝転んだ。

 見上げると、雲ひとつない青い空が広がっていた。

 川の流れる微かな音が、とても心地いい。

 そして、緑の匂い……。

 僕はうっとりした。

 不安が少しずつ消えていくような気がした。



 ふと見ると、少し離れたところにひとりの男のヒトが座っていた。

 そのヒトも、空を見上げていた。

 何をしているわけでもないようだった。


 やがて僕に気付いて顔をこちらに向けたけど、すぐに元の姿勢に戻った。



 その人は次の日も、その次の日も、同じ場所でずっとそうしているのだった。