ショコラは食べるだけ食べると、薄情なくらいすぐに建物を後にした。

 僕は思いきりオバサンの手の平をなめてお礼を言うと、ショコラを急いで追った。


「ショコラはあのヒトも警戒してるのかい? 優しそうなヒトみたいだけど」

「警戒するに越した事はないさ」


 僕は一応聞いてみた。

「あの……僕の事は?」

「おまえ? 困ってたから助けただけさ」

「えぇっ? そうなのかい?」

 僕は少し寂しくなった。

 そんな僕を見て、ショコラは笑った。

「とにかく俺たちみたいに飼われてる者は、世間知らずで警戒心が無さ過ぎるんだ。
 覚えとけ、自分を守るのは自分しかいないんだ。気をつけろよ、宗一郎。じゃあな!」

 ショコラはそう言うと、ショコラの家とは反対の方向に歩いて行った。


 僕は自分が世間知らずなのは分かっていたので、少し反省した。


 まだ太陽は高いところにあった。