僕はただひたすらに歩き続け、気付くと随分遠くまで来ていた。

 太陽は既に、西の山に沈みかけている。

 見渡す限りの稲田。

 僕がたどり着いたのは、車の往来もなく、家が点在しているだけのとても寂しげな場所だった。



「随分静かなところだなぁ……」

 辺りの風景を見て、僕は小さくつぶやいた。



 僕は、この世にはイヌやネコを棄てる “ごみ箱” があることを、小さい頃から母さんに聞かされていた。

 だから野良イヌでいるにはヒトの多い街は向かないということも知っていた。



 こんな場所がいいのかもしれないなと、ぼんやり考えながら歩いていると、土手の脇に小さな公園が現れた。