しかし、今日、この会場を魅了しているのは、ヒノエさんだけではない。



母と話をしている、黒のシックなドレスに身を包んだ、30代程の女性に俺は目を向ける。



ショートカットの髪の毛に、シルクのような白い肌。細い深みのある目に、色気のある唇。ほっそりとした身体。



うちの会社の専務の奥さん、三嶋名雪さんだ。



つい二ヶ月前程に専務と結婚し、その妖艶でセクシーな風貌に、男社員の間で噂になっていた。



俺は専務の結婚式以来、会うのは二度目だ。



観察していた俺は、三嶋夫人に艶っぽい笑顔を向けられ、慌てて会釈を返した。