タクシーが到着する前に俺達は下に移動する。



「雨は嫌い。…嫌なことを思い出すわ。」



ヒノエさんの言葉に俺は覗いた記憶を思い出す。



雨の中、キズキを探した記憶。雨と血の匂いが張り付くような感覚。



「あんたが思い出してどうすんのよ。」



「すみません…。」



俺が素直に謝ると、ヒノエさんが俺の頭を軽く小突く。



「楓ちゃんがそんなだと、私も疲れるわ。」



そう言われてしまって思う。



俺が暗くなってしまったら、逆にヒノエさんにとって良くないのかもしれない、と。