「やっぱり穂香は笑ってる方がいい」


そう言って爽はグイッとあたしを抱き寄せた。


「ちょっ……」


そんなあたしの抵抗も虚しく、いつの間にか爽の胸板に顔がぴったりくっついている。


端正な顔を見上げて、あたしの体温は急上昇。


もう唇と唇がくっついちゃいそう……。


……あれ?


あたしってば、どうして抵抗しないの?


あたしが好きなのは楓のはずなのに……


「今日はやけに素直じゃん」


そんな挑発的な言葉も、今のあたしの耳には届いてなくて。


「……じゃ、遠慮なく」


――あたしの唇を奪った。


爽のキスは、彼を思い出してしまうほど切なく、甘いキスで……。


あたしの胸を締めつける。


「いっそのこと、浮気しちゃおっか?」


唇を離した直後、呆然としているあたしに降りてきた一言。


その言葉はあまりにも、甘美な囁きで。


耳が溶けちゃうかと思った。


「なぁ? このまま俺にしちゃえよ」


そんな爽の甘い誘惑を、突っぱねることが出来なかった。


だって、あたし……


このまま爽と…って。


不覚にも思っちゃったんだから。


――最低だ、あたし。