「お前の、女」


それってどういう意味?


「それに対して王子は“そんなのもう過去の話だ”って言い張ってた」


過去の話……?


楓と爽は何を話していたの?


ますますふたりがわからなくなる。


まるで底なし沼にでも、落ちたかのようにあたしは見えない答えを探している。


探せば探す程、沈んでいく答え。


……わからない。


どうしてふたりは話していたの?


“過去の話”って何のこと?


それは、あたしが知ってはいけないことのような気がした。


……沼の奥に沈めておくべきなのかもしれないと思った。


「とりあえず、もうすぐ時間だわ。ホールに行きましょ」


「……うん」


複雑な気持ちを抱えたまま、あたし達はホールへ向かった。







「……穂香っ!」


レポート用紙と筆記用具を持ってエレベーターから降りた時…


「そ、爽……」


あたしの元に爽が駆け寄ってきた。


「さっきは、ごめん……」


瞼を伏せて、謝る爽。


その姿に、なんだかいたたまれない気持ちになった。